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2007/12/29
/14:04
『トラ・トラ・トラ!』 (TORA!TORA!TORA!) は1970年に公開された、1941年の日本軍による真珠湾攻撃を題材とする日米共同で制作された戦争映画である。
■概要
日米双方の立場を公平かつリアルに描いていることから高い評価を受け、特に日本では熱狂をもって受け入れられた。しかし、そのあまりにも怠惰としたリアルな米国描写のため、米国では興行的には大失敗した(後のビデオ発売によりこの損失は埋め合わされた)。このため、1976年の『ミッドウェイ』ではこれを受ける形で米国中心視点での製作に戻されている。また、同じ史実を題材にした映画に、2001年公開作品の『パール・ハーバー』があるが、こちらは興行的には成功を収めたが、映画内での日本軍に関する描写や歴史考証の矛盾に対する批判も多く、それによりかえって『トラ・トラ・トラ!』が再評価されることともなった。
ベトナム戦争の真っ只中であったこの時代に、単に米国が攻撃されるという内容のみならず、日本側の視点を大幅に取り入れ、ある意味日本軍を主役として描きだす映画をこれだけ力を入れて製作できる事から、当時の米国と言う国の懐の深さを感じ取れるものとなっている。また、真珠湾奇襲を防ぐことのできなかった原因を、史実に即してワシントン側に求める描写となっており、それまで奇襲攻撃に対して無防備であった責任の多くを問われていたウォルター・ショート司令官やハズバンド・キンメル提督は、大統領をも情報共有から除外したワシントンの隠蔽体質のため有効な対処手段をとることができなかったという日米開戦当時の模様を浮かび上がらせる(両名は2000年10月、米国議会により名誉回復されている)。
また、製作当初は未確認であった開戦前(空襲開始前)の駆逐艦「ウォード」による日本軍特殊潜航艇「甲標的」への砲撃および撃沈シーンが描かれている。(この甲標的は2002年に引き揚げられ、司令塔に被弾痕が発見され史実と確認された。)映画内ではその攻撃行動から報告が握りつぶされる過程まで描かれており重要なシーンになっている。劇場公開当時あまり知られていなかった事実を映画で表現した事は高く評価されている。
当初、日本側の監督を黒澤明が務めることとなっていたが、撮影開始直後に降板した。理由は、「黒澤の精神的病気」と発表されたが、アメリカ側の制作会社である20世紀フォックスとの撮影方針をめぐる対立からという見方が一般的。一説には、黒澤の映画に対するこだわりから、倍額の予算が無ければこの映画は撮れないと主張したからだと言われている。また20世紀フォックスと交わした契約書の中に「製作途中で放棄したりオーバーした予算は黒澤側が払う」という条項があったが、「予測できない事態が起こった場合は保険会社の支払対象になる」という条項もあったため、黒澤を無理やり病気に仕立てたとの説もある。(また、黒澤は生前「僕には (戦争体験がなく)戦争映画は撮れない。客席に弾が飛んでこない限り、あの恐ろしさは伝わらないだろう」と語っていたという(元黒澤プロマネージャー野上照代談、朝日新聞2006年12月13日))
日本側の監督は舛田利雄と深作欣二(クレジット上は共同監督だが、深作が担当したのは特撮合成が必要となる戦闘機のコクピットシーンのみで実質的にはB班監督)に交代した。このため、以後日本では黒澤が「気難しい完全主義者」であるというイメージが強くなったともされる。アメリカ側の監督はドキュメンタリー映画出身で「ミクロの決死圏」「海底 2万マイル」のリチャード・フライシャー。なお、日本側の部分の脚本の大半は黒澤明の執筆のものがそのまま使われたが、黒澤の強い要望による製作会社側との協定で、本編では一切黒澤のクレジットはでなかった。なお、黒澤はその脚本を阿川弘之の『山本五十六』を下敷きとして書いた。後に20世紀フォックスは原作料を阿川に支払ったと記録しているが、本人は記憶にないという。
なお、映画の最後で山本五十六連合艦隊司令長官の発する有名なせりふ「眠れる巨人を起こし、奮い立たせたも同然である」は史実ではないとされている。
日本公開版では、渥美清と松山英太郎演じる炊事兵が厨房で日付変更線について会話する、本作の中でも数少ないコメディーシーンがあるが、これはアメリカ公開版には無い。2007年3月現在日本で発売されているDVDはアメリカ公開版であり、当該シーンは含まれておらず、日本語のシーンには英語字幕が出る。
■キャスト
* ハズバンド・キンメル太平洋艦隊司令長官:マーティン・バルサム
* 山本五十六連合艦隊司令長官:山村聰
* ヘンリー・スチムソン陸軍長官:ジョゼフ・コットン
* 源田実海軍少佐:三橋達也
* ブラットン大佐:E・G・マーシャル
* ウィリアム・ハルゼー海軍中将:ジェームズ・ホイットモア
* クラーマー少佐:ウェズリー・アディ
* 南雲忠一海軍中将:東野英治郎
* ウォルター・ショート陸軍中将:ジェイソン・ロバーズ
* フランク・ノックス海軍長官:レオン・エイムス
* ハロルド・スターク海軍作戦部長:エドワード・アンドリュース
* コーデル・ハル国務長官:ジョージ・マクレディ
* ジョージ・マーシャル陸軍参謀長:キース・アンデス
* 淵田美津雄海軍少佐:田村高廣
* ジェームズ・リチャードソン提督:ロバート・カーネス
* ジョセフ・グルー駐日米国大使:メレデス・ウェザビー
* 野村吉三郎駐米大使:島田正吾
* 近衛文麿首相:千田是也
* 東条英機陸軍大将:内田朝雄
* 松岡洋右外相:北村和夫
* 吉川猛夫:マコ岩松
* 東郷茂徳外相:野々村潔
* 木戸幸一内相:芥川比呂志
* 山口多聞海軍少将:藤田進
* 大西瀧治郎海軍少将:安部徹
* 来栖三郎駐米特派大使:十朱久雄
* 奥村勝蔵駐米一等書記官:久米明
* 駐米大使館館員1:近藤準
* 駐米大使館館員2:新井和夫⇒現新井量大
* 炊事兵1:渥美清
* 炊事兵2:松山英太郎
* 花街の女:市川和子
* 軍人髭の老人:中村是好
* その他:井川比佐志、和崎俊哉、細川俊夫、葉山良二、浜田寅彦、中村俊一、二本柳寛、青木義朗、児玉謙次、宇南山宏、稲垣昭三、雪丘恵介、久遠利三、河村弘二、山本紀彦、須賀不二男、室田日出男
■トリビア
* 劇中日本海軍の下士官が、部下のパイロット達に対して艦影の描かれたパネルを見せ、その艦種を言い当てさせる訓練をする場面で、あるパネルを見せた時に部下が即座に「エンタープライズ!」と答えるが、下士官は「ばかもん、赤城だ、自分たちの旗艦だぞ」と叱るシーンがある。この時、パネルに描かれていたシルエットは実際の空母赤城とはまったく異なる艦形で、実は撮影で「赤城」として使用された米国海軍の空母のシルエットが描かれていた。後の航空機の発艦シーンで空母の艦形に違和感を感じさせないための配慮だが、叱られたパイロットの答えはある意味正解であった。
*本作撮影のため、米国製練習機のノースアメリカンT-6 テキサン [1]やバルティーBT-13を改造して、旧日本海軍の航空機が再現された。再現された機種は、零戦、九九式艦上爆撃機、九七式艦上攻撃機で、特に九七式艦上攻撃機は、T-6とBT-13をつなぎ合わせて製作されるという念の入れようであった。実機とあまり似ていない機体を改造し、出来る限り“本物”に似せようと工夫を重ねたスタッフの努力は高く評価されている。
* 九九式艦上爆撃機の攻撃シーンは実際と違ってほぼ水平爆撃である。改造機体では機体強度や構造的に無理があり、開戦当時世界一の技量と言われた急降下爆撃は再現されていない。
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